小さい頃、しいたけはそんなに好きな野菜じゃなかったんです。
茶色いし食感がふにゃふにゃしてるし、何より独特の風味が苦手で、給食でしいたけを見つけると少し落ち込んでいたのを覚えています。
その苦手意識は大人になってからも健在で、好んで食べるような野菜ではありませんでした。

そんな価値観が変わったのは、とある「原木しいたけ」と出会ってから。
そのしいたけは、熊本県多良木町で生産されています。多良木町は、熊本と鹿児島の県境にあり、面積の約80%が森林という自然豊かな町。実は、鎌倉から明治時代までの700年間、隠れ里として実在した秘境の地でもあるんです。

多良木の町中から車で30〜40分山道を走ると、槻木地区と呼ばれる集落にたどり着きます。
ここは、スマホが圏外になる場所もあるような山の中。そこで約35年「原木しいたけ」を育てているのが、しいたけ農家の落合龍見さんです。

しいたけ栽培には、2つの方法があることを知ってますか?
1つはハウスや施設で人工的に栽培する菌床栽培で、国内生産量の約90%を占めます。もう1つは森の中で天然のきのこと同じ環境で育てる原木栽培という方法で、日本では約10%しか生産されていません。
原木栽培のしいたけは、いわば「自然の賜物」。植物の成長に欠かせない光と水は日光や雨、木々が作る木陰はしいたけの成長に適した環境を作り、季節の移ろいによる温度変化はしいたけを大きく育てます。もちろん人手が必要な時もありますが、あくまでそれは副次的なもの。良質なしいたけが育つかどうかは、その時々の環境次第なのです。

とはいえ、その時々の環境を見極めて、どんな手間をかけるかが農家さんたちの技。長年の経験と日々の試行錯誤の賜物です。全ては、美味しい「しいたけ」を作るために。どんなに非効率でも、手間と時間をかけて人の手で育てるという”こだわり”が存在するのです。
こうして生まれたしいたけは、味も香りも格別。よく、原木しいたけの香りを「森の香り」と表現する方がいますが、本当にその通りだと思います。

落合さんが手がける原木しいたけは、日本でもトップクラスの品質です。年1回、全国から選りすぐりのしいたけが品質を競う「全農乾椎茸品評会」が開催されているのですが、2017年に各部門の日本一に与えられる「農林水産大臣賞」に輝いています。ちなみに2019年は、農林水産大臣賞の次の賞である「林野庁賞」でした。

実際にしいたけを見ると、美しさが一目瞭然。ぽってりと形の良い姿、色合いがよくツヤのあるカサ、中心から均一に広がるヒダは、まさに自然が生み出した芸術です。
品種は中葉中肉という比較的大きなサイズで、本当に大きいものだと直径15cm、厚さ10cm以上になることも。肉厚なぶん歯ごたえは抜群で、プリプリとした食感はまるでアワビのようです。また、じっくり育ったしいたけには水分が多く含まれているので、肉汁が豊富でとってもジューシー。噛むほどに、旨味たっぷりの肉汁が溢れ出てきます。その美味しさは、言葉では表現できません!

食べ方は、ヒダを上にして塩をふりかけて焼くシンプルな調理法がオススメです。ヒダに水分が出てきたら食べごろ。シンプルにそのまま食べても良いですし、お醤油やバターをのせても美味しいですよ。
ポイントは、火を入れすぎないこと。焼きすぎると水分が飛んでしまうので、程よい火加減を意識してみてください。

しいたけは日持ちが難しいので、生しいたけを楽しめるのは今の時期だけ。今回お届けするのは、その中でも旬を迎えてすぐに収穫する初物で、収穫した次の日には発送します。しいたけの生育状況は環境によるので配送日時の指定を承ることができないのですが、それも完全な自然栽培だからこそ。
ご家族やお友達同士で楽しんだり、大切な人への贈り物にも。熊本の大自然が育てた逸品を、ぜひお楽しみいただけたら嬉しいです。





機械化が進む酒蔵も多いなか、今なお創業当時の手仕込みにこだわって焼酎を作り続けている那須酒造場。現在は4代目の那須雄介さんを中心に、ご家族で焼酎の製造を行なっています。
球磨焼酎は米を蒸留して作りますが、中でも「醪(もろみ)づくり」は焼酎の味を左右する大切な工程です。醪(もろみ)とは、蒸したお米と麹菌に水と酵母を加えて発酵させた液体のこと。球磨焼酎は、醪を2回仕込んだ後にできる「二次もろみ」を蒸留して作られています。
那須酒造場では醪の仕込みを全て人の手で行うため、判断材料は職人の研ぎ澄まされた五感と今までの経験が全て。日々環境は変わるため、その時々の状況を見極めながら微調整を繰り返すといった繊細な職人技が繰り広げられています。同じ季節でも、暑い日もあれば寒い日もあったりと環境はさまざまです。それにも関わらず、毎年安定して高品質な焼酎を作り続ける技術は、まさに神業の域だと思いませんか?
地元だけではなく県外からのファンも多い、知る人ぞ知る逸品。その味の奥深さは、言葉では表現することができません。100年積み重ねてきた技術が光る”本物”の味を知ってみたくありませんか?






